信者は自身で劃然と彼の死期を定むることはできない。
彼ははたして彼の天職をなしとげしや、いなや、また彼ははたして天国に入るの準備を完成せしやいなやを確定することはできない。
しかしながら彼は神は愛なりと信ずる。
彼は彼の神が、死すべき時に彼をして死なしめたもうことを信ず。
すなわち恩恵(めぐみ)の手のうちに導かれ来たりし彼は、死すべき時ならでは死せず、また彼の死する時は彼の死すべき時であることを信ず。
神により頼む彼は、万事を彼に任(まか)し奉るのである。
まして人生の最大事たる死においておや。
彼の生涯の指導において誤(あやま)りたまわざりし彼の神は、彼の生涯の最大事件なる死の時期をえらぶにおいて、決して誤りたまわないのである。
内村鑑三 「一日一生」 10月16日